【目的論で考える子育て~自立と協力~】”どうして学校に行くのか?” その1

”どうして学校に行くのか?” その1

アドラー心理学では、子育てにおいて、自ら考えて動き、周りと協力しながら物事を進めていく力、すなわち「自立と協力」が重要だと考えています。
そしてそこには、未来どうなったらいいか?という視点から、そこに向かうにはどうすればいいか?という考え方をする”目的論”がベースにあります。

ただ放置するわけでもなく、甘やかすわけでもない。
置かれた環境のなかでも、しっかり目的をもって、自ら考え動ける子を育てるにはどうしたらいいのか?

元小学校の先生で、現在は子供達と関わる先生に向けた塾「未来学園HOPE」を運営されている梶谷希美さんへのインタビューをもとに、親である私たちが持っておきたい”心得”をお伝えします。

梶谷 希美さん(のんちゃん)


小学校の教員を10年以上、崩壊クラスの立て直しを毎年行う。
先生のための塾「先生塾」を開校したいという目標ができ、起業。
その他にも、教育プラットフォーム「未来学園HOPE」の立ち上げ、書籍の出版(先生の時間はどこへ消えた?-仕事の時短仕分け術-/学芸未来社)など活躍の幅は多岐にわたる。

プライベートでは歌うことが趣味。

”学校に行きたくないから行かない” にどう向き合うか

子どもは、親が見えない子どもだけの社会の中で、様々な経験をし、色々なことを感じながら生きています。

当たり前に通っていたはずの”学校”に、突然行けなくなってしまうお子様も多くいらっしゃいます。

親としては、何とか学校に行かせてあげたいと思うもの。
でも心は大事にしたい。
かといって甘やかしたくはない。

という葛藤を抱えるお母さんのためにも、様々な角度からこの課題に向き合っていきたいと思います。

梶谷さんからのアドバイス ”ここが大事!”

梶谷さん

お子さんが学校に行きたくない理由は様々だと思います。
まず私は、これまでもお伝えしてきたとおり、まず最初にすることは
「どうして行きたくないかを具体的に聞く」ことです。

例えば「友達がいない、友達とうまくいっていない」という場合には、
どのようにうまくいっていないのか、話をするだけの子はいるのか、休み時間はどう過ごしているのか、どんなときに嫌だと感じるのか・・・

勉強が面白くないとか、学校生活が面白くないという場合、何がどう面白くないのか、面白いと思う瞬間は少しでもあるのか、
など、起こっている”状況”をできるだけ具体的に聞きます。

そうやって聞くなかで、大きな問題もなく、本人が元気で他に不満がなさそうなのであれば、

・学校では、勉強以外にも得られるものが沢山あること。
・学校に行かないという選択は、友達とのコミュニケーションや遊びなどを失う事になること。
・ただ面白くなかったらやめるというのは自分勝手であって、行かないという選択をしても、面白い場所は待っていてもやってこない。他に自分で面白いと思う場所を作らないといけないこと。

というような、「行かない選択をしたらどうなるのか」も伝えます。

そのうえで、本当にこれはひどいなと思った場合、傷ついているなと感じた場合には、「つらかったね、話してくれてありがとう」と寄り添い、心のケアを最優先としますし、今の学校に行くという選択以外にも、フリースクールに行くとか、転校するとか、沢山の選択肢があることを伝えます。

そのなかで、「他の学校を探す」という選択をするお子さんもいます。

そうした場合には、気持ちはもちろん尊重しますが、
まずは「これは、今あなた1人の力でできる事ではないから、親御さんに相談が必要だよ。こんな事情で今の学校には行けないからお願いしますと自分で頭を下げてお願いしなければならないよ。」と言います。

これは、親御さんが学校に行くための費用を払ってくれていて、守られている立場にあるなかで、守ってくれている立場の人がダメということはできないという ”自分の置かれている立場” を知る必要があるからです。

「ダメと言われたら終わりではなくて、そうすると”自分で稼ぐ”という新しい選択肢が次にできる。それに向かってどうしたいかを考えることができるんだよ。」というように、目的に向かった関わりをしていくのです。

<解説💡>

日本では「これをしなさい、これはしてはいけない。」というように、しなければダメということと、してはいけないことは言うものの、肝心の「何のために」を伝えないことが非常に多いです。

これは子どもに対して「義務」を果たしている関わり方ともいえます。

一方、欧米のように、好きなことをしていい権利はあるが、それに伴う責任は負う必要があるというような「権利」を尊重する関わり方もあります。

子どもは、大人に比べて先のことがわからないことが多いもの。
それは単に経験していないことであるのもそうですが、目の前の出来事を全力で生きている、という見方もできます。

大人ができることは、子どもの話をよく聞き、子ども自身が置かれている”現在地”を伝えながら、本人が自分で考えて決めた事を最大限にリスペクトして、実現するための方法を一緒に考えること。
そのうえで起こりうる出来事と、それに伴う責任も自分で負う必要があるということを包み隠さず伝え、そのうえで選択させること。

そして一番大切なことは、できないことに目を向けて諦めるのではなく、できることを探して進んでいく方法を伝えるということ。

それが、目的論をベースにした子育てに繋がり、お子さんが ”自分の人生を生きる”ための手助けになるのです。

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