カウンセリングには時間がかかる?
プロの心理カウンセラーの方とお話ししていて、よく聞く悩みがあります。
「クライアントに寄り添って傾聴しているけれど、気づきや悩みの解消に時間がかかる。それどころか、解消されないことさえある。」というお悩みです。
セッションに時間がかかり、しかも、本人はあまりスッキリしている様子がない、という状況を前にして、
- 「アプローチがパターン化しているのではないか?」と疑問をもち、
- 「本当にベストな関わりができているのだろうか?」と迷いながら、
暗中模索を続けてしまう…これが、心理カウンセリングの難しさであり、カウンセリングが一般の人に広がりにくい要因でもあります。
プロでさえ時間がかかるのですから、カウンセリングを学んでいないならなおさら、親身に聞けば聞くほど、時間がかかってしまうことでしょう。
その結果、「悩んでいる人」は周囲から敬遠されてしまいがちです。悩んでいる当の本人もそんな気配を察知して、相談することもなく悩み続ける、そんな悪循環が生まれてしまうのです。
そこで、今日は、そのような常識を覆す「心理カウンセリングのメカニズム」について、具体例を挙げながら解説します。
常識を覆す!心理カウンセリングのメカニズムとは?
広告会社で営業職に就く美咲さん(仮)は30代でチームリーダーを務めていました。
しかし、ある「できこと」がキッカケで、上司への悩みを抱えるようになりました。
すごく頑張って、 休みの日も調べ物や資料作成をしてやり遂げたプロジェクト。
お客様は喜んでくれたのに、上司にダメなところばかり指摘された。
悲しくて、上司の顔を見たくない。
会社にも行くのも憂鬱…
さて、美咲(仮)さんに対してどのようなアプローチが考えられるでしょうか。
実は、同じような悩みでも、人によって効果的なアプローチが違います。
そのためにまず、知っておきたいのが「変化の起きる3つのレベル」という基本的なメカニズムです。
- 行動レベル
- 認知レベル
- 情動・身体レベル
この3つのレベルは「悩みの深さ」を表し、必要なアプローチを見極めるための目安となります。
では、早速それぞれでレベルでのアプローチの違いをみていきましょう。
①行動レベル=とりあえずやってみる!
「とりあえずやってみる」で解決する「行動レベル」のアプローチです。
カウンセラーは、まず、クライアントの気持ちを「良い状態」に切り替え、日常で使用する言葉や独り言の再選択、表情・姿勢・呼吸の切り替え、五感イメージを編集する手助けをします。
そして、
「本当はどうなりたい?」
「そのためにどうする?」
と問いかけることで、クライアントが向かいたい方向へ意識を切り替えて、気持ちを仕切り直していきます。
美咲(仮)さんは、自分を励ます言葉がけを毎朝繰り返し、「心のスイッチ」のトレーニングを続けることで、次の仕事に取り組む気持ちになることができました。
このように「行動」や「五感イメージ」を変えるだけで、あっという間に解決するケースもたくさんあります。
一方で、この方法では、悩みを解消することができず、ひきづってしまったり、その場では治っても、また同じような悩みを繰り返してしまう人もいます。
②認知レベル=相手の立場で考える!
「相手の立場で考える」ことで見え方や考え方が変わる「認知レベル」のアプローチです。
美咲(仮)さんは、自分の身に起こったことを「出来事・思考・感情・行動」に丁寧に分解・整理しながら話を聞いてもらいました。
そうするうちに、「報告の際に上司が一緒に喜んでくれなかったことがショックだったのだ」という自分の本当の気持ちに気づきました。
カウンセラーに導かれながら、自分の想いにしっかり寄り添うと、上司の立場に立ってみることができるようになり、
すると、上司は自分のことを「お客様と勝手に盛り上がっている」と思っていた、ということにも気づくことができました。
そして、「次からは、プロセスから上司も巻き込んで、一緒に盛り上がろう!」と思えたのです。
自分の想いと上司の想い、それぞれをきちんと受け止められた翌日からは、上司と普通に会話することができ、仕事への意欲も戻ってきました。
このように、自分の気持ちをしっかり味わい、ほかの人の立場を深く体験することで、視座を変えたり、視野を広げたりすることができるようになります。「相手の立場で考える」ことで、悩みが解決されるケースです。
しかし、上記2つのアプローチでは、解決しない場合があります。
その場合は、どんなアプローチが有効なのでしょうか?
③情動・身体レベル=トラウマを解決する!
「トラウマを解決する」ことが必要な「情動・身体レベル」のアプローチです。
いい仕事をしたのに、上司に認めてもらえずショックを受け、仕事も手につかなくなった…。
という仕事の悩みの背景に、幼少期の辛い体験からのトラウマが隠されていることがあります。
この場合は、「情動・身体レベル」のアプローチが有効です。
美咲さんは、「テストで98点をとっても怒られた私、58点でも頭を撫でてもらえる弟」と、母親から受けた姉弟間の格差を思い出しました。
そして、「ありのままの私を認めてほしい!」という感情にフタをしていた自分に気づき、その感情を吐き出すことにしました。その頃の自分をねぎらい、愛おしく包み込んであげたのです。
すると…、
上司にダメだしされても凹んでいない自分がいました。
本当に認めてもらいたかった感情を解放し、自己受容できたことで、もはや上司との関係は問題がなくなってしまったのです。
この「情動・身体レベル」でのアプローチによって、美咲さんは、心の根っこの部分からの悩みを解決することができました。
心理カウンセリングの知識と技術で解決できることはたくさんあります!
いかがですか?
同じ訴えであっても、3つのレベルのどの段階から発せられているかによって、アプローチの方法はまったく異なることがおわかりいただけたでしょうか?
このメカニズムを理解することなく、いくら相談にのっても、悩みを本質的に解決することは難しいでしょう。心の問題に触れる場合、「寄り添う」「傾聴」といった基本姿勢は欠かせませんが、それだけでは人の悩みを解決することはできないのです。
このように、心理カウンセリングの基本的な仕組みをしっかり学ぶことで、さまざまな人の悩みは、どんどん解消します。人生で悩んでいる時間も、相談の時間も、圧倒的に減らすことができるのです。
5月に開催する4日間の心理カウンセリング集中セミナーでは、症状やアプローチと合わせてさらに詳しく学ぶことができます。。
・クライアントの悩みを解決まで導きたい。
・職場や家庭で、周りの人の悩みの相談にのってあげたい
そんな方は、ぜひ、ご参加ください。
▼プロのカウンセリング技術を体系的に学ぶ・心理カウンセリング4日間集中セミナー▼
平本式初級カウンセラー認定コースです。